災害と赤ちゃん
東日本大震災から10年。
南海トラフ大地震など、いつ大きな地震がおこってもおかしくない状況の今。
「災害のショックで、母乳って出なくなるんですよね?」
「避難所での母乳育児はどうするの?」
小さな赤ちゃんがいるご家庭では、特に不安もあるかと思います。
そこで今回は、「母乳育児と災害」についてお話をします。
まずは・・・
災害時こそ、母乳栄養を!ということです。
なんといっても、母乳には、病気を防ぐ免疫が多く含まれています。
過去の災害時、避難所では、いろいろな感染症が流行することがあります。
2016年の熊本地震のときは、胃腸炎が大流行し、赤ちゃんや小さいお子さんが
点滴治療をうけている様子も報道されていました。
ほかにもインフルエンザ、通常の風邪であっても赤ちゃんにとっては命にかかわる病気です。
すべての感染症や病気にかからないことを保証するわけではありませんが、
少しでも感染症に強い体でいるために、母乳育児は有効であると考えられています。
被災ストレスで母乳が出なくなるってホント?
ショックで母乳は出なくなるのか・・・その通りです、出なくなります。
母乳分泌を司るホルモンは、命に係わる危機的な状態に陥ると分泌が止まります。
しかしながら、それはごく一時的なものなのです。
また、ほっとできる環境に戻ると、すぐに分泌は再開します。
母親の体は、赤ちゃんの命を守るために、ちょっとくらいではへこたれないようにできているのです。
熊本地震の際、多くの助産師仲間が現地で母子のために活動をしていました。
その時の報告の中に
「完全母乳であったが、震災のショックで母乳が出なくなったと思い、完全ミルク栄養に移行した」
「混合栄養であったが、避難所で赤ちゃんの泣きがウルサイ!ミルクが足りていないのだ!と苦情があり、完全ミルク栄養に移行した。」
というような症例がいくつも挙げられていました。
赤ちゃんが良く泣くようになった=母乳が出なくなった。
と思ってしまうわけです。・・・更に周囲の人達も、
親切心から「赤ちゃんもお母さんもかわいそうに・・・」「ミルク用意してあげる!」
さらにお母さまも「泣き声で周りにご迷惑を掛かけてしまう」と考え、
泣きに応じてどんどんミルクの量が増えていく・・・
その結果母乳の回数が格段に減り、本当に母乳が止まってしまうということが起こっていたのでした。
赤ちゃん自身も当然、震災のストレス、環境の変化、などでいつもよりもたくさん泣いてしまうことや、
不安から身を守るためにおっぱいを離さない、などの変化があることが考えられます。
お腹がすいているので泣くばかりではありません。
「ずっとおっぱいをくわえている状態」は自赤ちゃんの自然な反応です。
そういう状態を支援し保護しできる環境を提供することが避難所設営に求められています。
「災害時における乳児栄養授乳まるわかりガイド」の中で避難所でも、
安心して授乳できる環境に配慮すること、授乳中の母親に優先的に食事と水分が行き届くように
配慮することと記載されています。
長くなりましたので、続きは次回。。。